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2022/02/01 06:26

どうしてヴァイキングなのか、よく尋ねられることがあります。


私のヴァイキング人生の始まりは、10代の終わりの頃に出会った「北欧神話と伝説」という1冊の本です。


淡々と語られる登場人物たちの堂々とした振る舞い。なぜかその登場人物たちに惹かれて、夢中になって繰り返し読みました。そこで語られていたのは、ヴァイキングが信じていた神と英雄、そしてヴァイキング自身の物語でした。


今ではヴァイキングの魅力はたくさんあるのですが、はじめに大きく惹かれたのは彼らの生き様と精神なのだと思います。


【財産よりも功績を残す】

【仲間を大切にする】

【誇り高く信念がある】


ヴァイキングというとはじめに思い浮かぶ、無作法で荒々しい海賊のイメージ。私が物語から感じたヴァイキング像は、それとかけ離れたものでした。

冒頭の絵は、ヴァイキングたちの魂が集まって戦う北欧神話の一場面 "ラグナロク" を、その頃に描いたものです。


この記事では、ヴァイキング精神について詳しく書いていこうと思います。


【財産よりも功績を残す】


「財産は滅び、身内は死に絶え、自分もやがて死ぬ。だが決して滅びないのは自らの得た名声だ。」

「人は誰でも死を迎えるその日まで、快活で楽しく過ごすべきだ。」


"オーディンの箴言(しんげん)” という詩に残されているように、ヴァイキングの物語からは死の覚悟と生きることの力強さが感じられます。


ここでいう “自らの得た名声” とは、 “自分が行った行動” とも言えるのではないかと私は思っています。

物よりも自分の行動に重きを置いたヴァイキングの精神。それを表すこんな逸話があります。



「我らの王は、黄金ではなく栄誉で自分の年齢を数えた。王にとって腕輪は、戦士たちの腕で輝く時こそ最も美しく見えたのだ。」


ヴァイキング時代よりも昔。5世紀ごろのデンマーク王ロルフ・クラキと、王に仕えた ロルフ王のベルセルカー” と呼ばれる一団の伝説。


ロルフ王のベルセルカーの1人である剛気のヒャルテが、最後の戦いの前に仲間たちへ語った言葉です。彼らはロルフ・クラキと共に出陣し、王が倒れた後は盾を投げ捨てて命の限り戦って敗れました。


ロルフ・クラキは偉大な戦士であり、人当たりも良く物惜しみをしない男だったので、北国第一の王と噂され、彼の元には素晴らしい戦士たちが集まっていたそうです。ロルフ・クラキは、金銀を手に入れたら惜しみなく部下たちへ分け与えていたといいます。


この時に語られた多くの英雄的な言葉は、詩となって後世に伝えられました。ヴァイキング時代にも、ノルウェーのオーラブ・トリュグヴァソン王がロルフ・クラキの人徳を見習おうとしたり、大きな戦いの前にはこの詩が歌われたりすることがありました。



【仲間を大切にする】



「わしも昔は若かった。1人で旅をして道に迷ったこともある。人に出会えた時は嬉しかった。人は人にとって喜びなのだ。」


「野原に1人で立つもみの木は枯れる。樹皮も葉もそれを守ってはくれない。誰にも愛されない人間も同じことだ。どうして長生きすることができるのか。」


オーディンの箴言(しんげん)では、人の繋がりの大切さを、温かくもあり厳しくもある表現で伝えています。


厳しさを感じるのは、当時はまず生きていくために、人の繋がりがなければ自分や周りの身を守れなかったからだと思います。「自分の血族や婚族が殺された場合は、仇に対して復讐や賠償金で償わせる」ということが、公権力のない社会の秩序を保っていたと考えられています。

やったらやり返される、だからなるべくやらない、でもやるときはやる、ということなのでしょう。

良き友として誓約兄弟の誓いを交わせば、それは血族と同じ様な同盟を結ぶことになりました。


現代を生きる私には、そのような当時の厳しさを本当の意味で理解することは難しいのだと思います。

しかし今と変わらないような、家族や仲間を思いやる温かな心もまた、ヴァイキング達の物語から強く感じられるのです。



「わしが生き永らえるのは、我ら全員の命が助かる時だけだ。そうでなければ皆と同じ道を行こう。」


ポーランドにあったとされる城塞ヨムスボルグの創始者の孫であるヴァグン・アーカソンの言葉。


ヨムスヴァイキングと呼ばれた戦士集団には、

「団員は血族の観念を捨てなければいけない。団員は他の仲間の仇を、自分の兄弟の仇のように討たねばならない。」

という掟があったとされています。


この言葉はヴァグンとその仲間が敗戦し、捕らえられて次々に処刑されていた時のものです。

ヴァグンのことが気に入った敵方のエリク侯は、配下にならないかと提案しますが、ヴァグンは自分だけが助かることを良しとしませんでした。しかしこの彼の行動により、生き残った者たちは皆解放されて、ヴァグンとエリクは親友になったと伝えられています。



【誇り高く信念がある】


「我らに王はない。各人が平等なのだ。」


君らの王は誰か、とフランク人に尋ねられたヴァイキングの言葉。


このヴァイキングの一団の指導者はロロという、北フランスにノルマンディ公国を築いた人物でした。指導者はあっても主従関係ではなく、対等な立場で同盟が結ばれて遠征が行われていたようです。


ヴァイキングの物語から感じる、1人の人間としての誇り高さや信念に、私はとても惹かれます。それはたった1人で自由に生きているということではないと思います。友情のため、利益のため、仲間との信頼関係も大事にしつつ、しかし媚びることはなく自尊心を持っている。

ヴァイキングとは、そんな人物たちの集まりのように感じるのです。



「あの王は片手だけしか持っていない。取るだけで与えることを知らぬ片手だけだ。」


実際には、太っ腹のブランドという男が、無言でこの意味を王に伝えたという逸話です。


ある時、ノルウェーのハラルド苛烈王は、太っ腹で高潔な心情を持つブランドという男の噂を聞きました。王はブランドの豪気さを試したくなり、彼に何度も使いをやって贈り物を要求します。


1度目は深紅のマント、2度目は黄金飾りのついた斧、ブランドはそのどちらも無言のままで素っ気なく差し出しました。王はその様子を聞いて、「このくらい一言も費やすだけの値打ちがない」と表しているブランドの振る舞いに豪気さを感じます。


そして3度目、ジャケットを要求された時に、ブランドは無言のまま片袖をちぎり取ってから使いの者に投げ渡しました。王は使いの者から片袖のないジャケットを受け取ると、この様に言います。


「その男は賢明さと高貴さを両方持っている。なぜ片袖をちぎり取ったのかはよく分かるぞ。

 “あの王は片手だけしか持っていない。取るだけで与えることを知らぬ片手だけだ” 

そう思っているのだ。」


そしてブランドは王に呼び出され、丁重に迎えられて大きな栄誉と素晴らしい贈り物を受け取ったそうです。

最後まで誇りを持って接したブランドも、それを寛大に受け止めたハラルド苛烈王も、とても気持ちの良い人物に思えます。